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乙女椿

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2021-05-03 (Mon)

進はYoutuberになることにした

進はYoutuberになることにした

進はYoutubeを見ながら考えた。これで金が稼げるならいいな。スマホは持っているし、あんまりしたことないが、録画はできる。でも…。何を撮る?とりあえず姉に聞いてみた。「なあなあ、姉ちゃん。Youtubeで何見てる?」「んーっとねー。節約料理のかなあ。割と見るよ。あと、猫の動画とか。かわいーよねー。」んんん。料理…はできるけど、そんなチャンネルいっぱいあるし、男の節約料理…誰か見るかなあ。猫…はうち飼ってないし。「...

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進はYoutubeを見ながら考えた。
これで金が稼げるならいいな。
スマホは持っているし、あんまりしたことないが、録画はできる。
でも…。

何を撮る?

とりあえず姉に聞いてみた。
「なあなあ、姉ちゃん。Youtubeで何見てる?」

「んーっとねー。節約料理のかなあ。割と見るよ。あと、猫の動画とか。かわいーよねー。」

んんん。料理…はできるけど、そんなチャンネルいっぱいあるし、男の節約料理…誰か見るかなあ。猫…はうち飼ってないし。

「あ」
姉が誰かと話し始めた。
「ちょ、なんでそんなことしなきゃなんないのよ!うう、稼ぎ時なんだから、その日はだめ!」
スマホから怒鳴り声が聞こえてくる…道明寺さんだ。

ん?
そうだ。道明寺さんの動画なら、みんな見るだろうなあ。
もちろん、類さんも、美作さんも、西門さんも、写真が載るだけでも雑誌が売れるっていうし、動画ならすぐに再生回数上がりそうだな。

「ほんっと、俺様横暴なんだから!」
ぷんぷん怒っているけど、なんか目がキラキラしてたりして。言い合いを楽しんでるんだろうなあ…。

「なあ、姉ちゃん」
「何よ」
「道明寺さん、Youtubeに出てくれないかなあ…」

絶句。
あんぐり口をあけて驚いている姉。
「あんた、何考えてるの!」

**

「何してるとこ撮るのよ」
「う…ん、料理とか?」
「げ、道明寺の料理?マズそう…」

だって、思いつかないし。

「とりあえず料理として、何作るのよ?」
「…」

いかんせん、二人の頭には、料理している道明寺の姿が浮かばない。

「…なんも浮かばない」
「うん…」

「あ」
「何?姉ちゃん」
「卵料理とかどう?」

卵料理。ゆで卵、卵焼き、目玉焼き。オムレツ、茶わん蒸し。
簡単なのから難しいのまでいろいろあるし。

うんうん、ってうなずいてるけど…卵料理?
道明寺さんが???

思わず、ゲラゲラと笑いながら、フライパンを持っている道明寺を二人で想像した。

「で、姉ちゃん、道明寺さんに頼んでね♡」
「げ…」

ラウンジで頼んでみたら、話を聞いていたF3までやってきた。
場所は姉弟が二人で住むアパート。
ふたりには住むのに十分な広さだけど、大男が4人もやってくると、半端なく狭い。
「ちっ、相変わらずせめーな、おい、類、そこに寝転ぶな!」
「だって、眠いんだもん」
「だもんじゃねーよ、お前、何しに来たんだよ!」
「ん、司が料理するのを見に」

まあまあ、といつものようにあきらと総二郎がなだめ、つくしを振り返った。
「おい、司は何を作るんだ?」

「目玉焼きにしようかなって」

目玉焼き。フライパンに油をひいて卵を割り入れ、ふたをして火が通ったら出来上がり。
つくしにしても進にしても、作りなれた料理である。

「簡単すぎるかと思ったんですが、初めて料理されるんだったら、こんもんかなって」
と恐縮したように言う進。

やる気満々、黒いカフェエプロンを付けた司は、これまた立っているだけでカッコいい。

初めてだから何をどうしたらいいかわからない二人が準備したのは、ガスコンロとフライパン。そして、卵2パック。目玉焼きなら2個でいいと思うけど、たまたま特売で1パック98円だったので、奮発して2パックにしたのだ(おひとり様1パックだけど、二人で行ったし)。で、油と調味料。

撮影機材はスマホとスマホスタンド。100均で買ったスタンドで四苦八苦して構図を決めた。なんせ被写体は背が高い。手元とフライパンを写すにはどうしたらいいかわからなくて、結局、斜め前から覗き込むような形にした。

まずは、試し撮り。
「最初はどうするんだ?」と司。

「うーんとね、卵を割ってフライパンに入れる…前に、フライパンに油引いて、コンロに火をつけて」
「おいおい、ちゃんと説明しないと、できるものもできないぜ」と外野からヤジ。

何にも考えなくても自動的に手が動く料理のベテランとは違う。そっか、と顔を引き締めたつくしは、んんん、としばらく考え、うん、と頷いた。

「まず、手順を言うね」

1.ガスコンロに火をつける。
2.油を小さじ一杯ぐらい入れる。
3.油が熱くなったら、卵を割り入れる。
4.火を弱めて、フタをする。
5.5分ほど待ったら、出来上がり。

「じゃあ、やってみよう!」

司は、コンロをしげしげとみて、つまみをひねった。ボッと火が付いたのを見て、思わずF3から、おお、と嘆声があがる。って、火をつけただけじゃん!…得意そうな司。

出されていた油を小さじに入れようとする。でかい男がチマチマした計量スプーンを持っているのがおかしい。
「チッ、こぼれた」
こぼれたのはフライパンの上だからまったく構わない。
それで、とつくしを見るから、
「油、のばして!」と言うと、首をかしげる。

「フライパンをまわして、油が全体にいきわたるようにするの」

フライパンをまわす?
フライパンをねじるようにまわそうとするので、慌てて進がとめる。

「違います!フライパンを前後にゆっくりと動かしてください!」

手つきをやって見せる進を見て、ああ、と動かす。
…一つ間違えば、熱い油が飛び散る大惨事である。

「おいおい、あぶねーな」
「スリルあるねえ」

「卵、割ってフライパンの中に入れて!」

おう、と卵のパックの中から一つを取り出す…と割れた。呆然とする司。

「やだもったいない!もっと力抜いてよ!」
「お、おう…」

慌ててボウルに卵の残骸を受け、司に手を洗わせる。
その間にフライパンは熱しすぎで煙が立ち上がってくる。

「火を止めて!」
「あ、なんでだ?」
「熱くなりすぎ!」

進がコンロの火を消した。

「じゃ、もうフライパンがあったまってるから、卵いれてから火を付けよ」

無言の司が再び卵をつかむ。…ぐしゃ。

「あー、もう、力入れないでよ!」
司のこめかみにはくっきりと怒りのマーク。
「くそっ!」

再び手を洗って、卵をつかむ、今度はつかめた!
フンっと得意そうな顔をした司。
フライパンの上で…ぐしゃ。

「あーーーーっ」
「おいおい」
「なんでだ?」

「…卵ってどうやって割るんだ?」

ガク。

実際のところ、卵を割ったことがあるか、といえば、無い。エッグスタンドに美しくセットされた卵はすでに好みの固さにゆでられているし、料理したことが無いと確かに生の卵を扱ったことがないはずだ。

「あ…卵割ったことないんだ…」
「そっか、そうなんだ…」
呆然とする姉弟。

「俺はあるぞ。ケーキ焼くのにいるからって、卵割るのを手伝わされた」とあきら。
「卵かけご飯の時、割るな」と総二郎。
「…無い」と類。

卵かけごはんって、何?という類を、信じられないという顔をしてみている進。

「わかった、お手本見せるね」
と、気を取り直して、つくしは進に卵とボウルを渡した。

俺かよ!と心の中で文句を言いながら、進は卵を受け取り、ボウルの中に割り入れた。
コンコン、パカッ。
卵を机に軽く打ち付けてヒビを入れ、そこに指をかけて二つに割り、中身をボウルに入れる。
たったこれだけである。
これだけであるが…。

「角にぶつけて卵を割ろうとすると、そこからぐしゃってなっちゃうことが多いから、平面に軽くぶつけてね」

練習、と言って卵を渡され、それをボウルに割り入れようとする司。
何気なく机にぶつける…力が強すぎる。ぐしゃ。

「もっと弱い力で!」

コッコッ…弱すぎて割れない。

「もうちょっとだけ強く!」

コン!

「あ、ナイス、ひびが入った!」

パカッ。
無事に卵が割れた。

F3から拍手喝采である。

ここまでたどりつくまでに使った卵は半ダース。
(2パック買っておいて良かった)

「じゃ、目玉焼き作ってみよう!」

**

きれいに油をふき取ってリセットしたフライパン。
もう一度油をひいて、コンロに火をつけ、卵を慎重に2つ割り入れた。

ジュウ~~という音と共に焼けるのを、しげしげと覗き込む司。

「ふたをして、火を弱めて!」

「あ?なんでだ?」

「そのままだと外だけ焼けて焦げちゃうの。ふたをすれば中まで火が通りやすくなるから」

「タイマーセットして!」

つくしや進だとタイマーは不要である。だいたいの時間であとはなんとかなるから。
でも初心者にはタイマーを使った方がわかりやすい。

タイマーの使い方を教えて、時間をセットして、一息ついた。

つくしはその間に、ざるを取り出して、卵の残骸を漉している。なんせ練習も含めて6個分の卵である。捨てるのはあまりにももったいない。

「お前、それ料理するんじゃないだろうな」
「当たり前じゃない、もったいないもん」

嫌そうな顔をしているF3。類だけは興味津々で、つくしの手際を見ている。

「ねえ、甘いのがいいな」と類。
「了解、出し巻きじゃなくて、甘い卵焼きね」

言っていある間に、タイマーがピピピとなり、目玉焼きが焼きあがった。
ふたを開けてみると、美しい目玉焼き。上出来である。

「塩コショウして!」と言われ、塩を軽く振り、次にコショウを振ろうとしたらふたが外れた。…コショウまみれである。

「「「「あ~~~~~!」」」」

さっと刷毛をとりだしたつくし。手際よく余分なコショウを払い落とし、なんとか、見られるところまでに回復させた。

「「「おお~~~!」」」

やっと目玉焼きの完成である。

進にお茶を入れるように言ったつくしは、卵焼き器を取り出し、塩・砂糖で味付けした卵を少しずつ流しいれ、手際よく卵焼きを作り出した。何回も繰り返される手順。あっという間に卵焼きが出来上がり、カットされて皿に盛られた。

とにかく、お茶で一服。
大奮闘の司と、指導で疲れたつくしは、一口飲んでため息をついた。

目玉焼きは司の前に置かれた。

「初の料理だもん、味見してみて」

フォークとナイフを手に、一口食べる司。少しコショウが強かったみたいだが、食べられる味である。ただ…。

「なんか、この卵、味が薄いな」

スーパーでダース98円の卵の味である。それは仕方がない。

「おお、食べられるんだ」
「良かったな、司」
「食べたい」

横からお箸を出して、片方の目玉は類の口の中におさまった。

「ん、食べれる」

「あったりまえだろうが!」と司。

「俺なら醤油がいるな」
「ソースじゃないのか?」

とうるさい外野の前に出されたのは、つくしの卵焼き。
ふんわりといかにも美味しそうである。

それぞれ割りばし(どこかのスーパーのものらしい)を手に、味見しだした。
(あきらだけは、びみょーな顔をしていたが)

「ん。美味しい」とご満悦の類。

「卵焼きってああやって作るんだ…」とF4。
つくしの弁当の中身として見慣れているが、作られていくのを見るのは初めてである。

「そっ、案外手間がかかってるんだからね」

「あのー…」と進。
「何?進」とつくし。

「これって、リハーサルですよね?」

愕然とした全員。
すでに気力は使い果たしている。

「あー、また今度ってことにしようや」
「だな。疲れたし」

と、類が何か手に持っている。

「何だ、類、その包みは?」

「佳代に、卵ある?ってきいたら、これを渡された」

と取り出して見せたのは、ウズラの卵。
茹でて使うことが多いが、あえ物に生で使うこともある、が。

「これで卵焼きできる?」

「「「「「…」」」」」

「また、今度にしようぜ」
「だな」

と同じセリフが繰り返され、そそくさとF3は帰っていった。
きょとんとしている類に、つくしはウズラの卵でゆで卵をつくり、ベーコン巻きにしたものを作ってあげて、晩御飯にしたのだった。

**

「なんで卵ってあんなにやわいんだよ!固い卵ならもっと使いやすいのに!」と言った司に対し、西田が用意したのはダチョウの卵だった。
「これならば十分固いと思いますが」
「どうやって割るんだよ!」
「のこぎりを使うそうです」
「…」

**

朝ご飯に珍しく生卵が小鉢とともに出てきた。
「卵かけごはん用に作られた卵だそうです。こちらの専用のしょうゆをお使いください」
あれからあいつらと飲みすぎて、二日酔い気味である。正直食欲が無かったが、二日酔いに卵は効く。そそくさと食べた総二郎だった。

**

卵割ったことが無いって、司らしいよな。まあ、俺みたいなのも珍しいと思うけど。
実はあきらは、片手で卵が割れる。ケーキを作るのに大量に割らなくてはならなかったからである。
鮮やかな手つきで、ボウルに、カン、パカッと卵を割り入れ、それをシェフに渡した。
「あきら様、これはどういたしましょうか?」
「ああ、プレーンオムレツにしてくれるか」
「かしこまりました。…相変わらず鮮やかな手際ですね」
「…鍛えられたからな」

**

「卵割ってみたい」
佳代とシェフは首をひねった。卵を割ってどうするのだろうか?
契約農家から取り寄せている卵は、殻もしっかりしている。コンコン、パカッ。
つぶれることも無くあっさりときれいに割れ、卵は無事にボウルに着地した。
「簡単じゃん」
鼻歌交じりに6個ほど割った卵。甘い卵焼きにしてね、と言われて、類の食卓にだされたのだった。
「牧野のほうが美味しい」

**

「進」
「何、姉ちゃん」
「まだやりたい?」
「…」

Youtuberへの道のりは遠かった。

FIN

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2021-03-05 (Fri)

乙女椿の咲くころ

乙女椿の咲くころ

だいぶ暖かくなってきましたね。今年の乙女椿は、例年の何倍もの蕾を付け、満開になりました。寒さに耐えて、一気に咲き、目を楽しませてくれています。去年の当ブログ。何もかもが上手く行かなかった年という事もあって、記事は12。って、ひと月に1つしかなかったということ。申し訳ありませんでした。おみくじ凶3つから始まって、コロナがひどくなり、母の具合が悪くなり。慣れないオンラインは24時間休む暇がなく、ストレスで...

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otometubaki2020-2.jpg

だいぶ暖かくなってきましたね。
今年の乙女椿は、例年の何倍もの蕾を付け、満開になりました。
寒さに耐えて、一気に咲き、目を楽しませてくれています。

去年の当ブログ。
何もかもが上手く行かなかった年という事もあって、記事は12。って、ひと月に1つしかなかったということ。
申し訳ありませんでした。

おみくじ凶3つから始まって、コロナがひどくなり、母の具合が悪くなり。
慣れないオンラインは24時間休む暇がなく、ストレスで胸が痛くなり。
鏡の中には、口角が下がって、いかにも疲れた顔が続いていました。

秋の終わりから仕事が少し楽になり、一人で外を出歩くようになったのですが、
やってきたのが第三波。再び緊急事態宣言…。

***
2月に仕事休みに入り、友達から緊急の誘いが入りました。
宝塚雪組の千秋楽、トップのさよなら公演付きのライブビューイングにいかないかと。
隣の駅の映画館まで見に行ってきました。
…すみません、久しぶりだったのもあり、途中意識が飛んでいました。
開始が13時。途中35分休憩で公演終了が16時半。それから、全員そろってのトップのさよなら公演(通常はコロナ対策として舞台上の人数を減らしているそうな)。それから卒業退団する8人の花束贈呈とあいさつ。カーテンコール、カーテンコール、カーテンコール。
終了は18時でした。5時間!

スクリーンで、幕が上がったのを見た途端、ああ、舞台が見たい!と強く思いました。
去年はバレエを一回も見に行きませんでした。
ライブビューイングはアップもあるので、とても面白いですが、空気が遠いんです。
堂々たる声を響かせるトップさんの歌を聴きながら、楽しみましたが、少し寂しかったです。

***
同じ友達から再びライブビューイングのお誘いがありました。
ミュージカル「ポーの一族」です。大千秋楽。実は宝塚公演の方は見てたので、興味はあったのですが、忘れてました。
ミュージカルですから、男性が入ります。元宝塚と元劇団四季?の歌・踊りの中に入った俳優千葉雄大、アラン役。歌は上手でしたが、少年というにはすでに大人になった体型。ぽっちゃり見えてしまって気の毒でした。
エドガー役の明日海りおは、ドアップで始まったスクリーンから、舞台中、客席中を支配していました。さすがです。シーラ役の夢咲ねねが素晴らしく美しく、見惚れました。

東京・大阪・名古屋の最後を飾る大千秋楽。よくぞ無事に最後まで公演できたものです。
最後の挨拶で、演出家小池修一郎とともに、原作者の萩尾望都も舞台上に上がり、カーテンコールにこたえていました。行ってよかったです。でもやっぱり本当の舞台が見たかったな。

***

なんと宝塚のチケットが当たりました。銀行の定期預金の懸賞です。
ペアだったので、まったく宝塚に行ったことのない人をお誘いしました。
…体調を整えておかないと。

今年は良い舞台に出会えるでしょうか。
心にも栄養が必要です。
このしんどい毎日を乗り越えるために。

そして、良いお話に出会えますように。
ささやかなお話でも書けますように。
良い年になりますように。

管理人のみ閲覧できます * by -

Re: そんな時もありますね * by ロキ/イズン
mo**様

そうですね。そんなときもある。
今は良いことを数えましょう。
びっくりするほどの蕾をつけた乙女椿。
お出かけの予定があること。

春の明るい陽射しを感じると、重い衣を脱ぎたくなるように。
(でもまだ寒い💦)
ボチボチいきます。

コメントをありがとうございました!

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2021-03-03 (Wed)

雛祭り

雛祭り

「ふわ、すごーい!」薔薇屋敷とも呼ばれる美作邸。早春は薔薇の季節ではなく、代わりにビオラやミモザなどが咲き乱れているが、つくしが見たものは、この屋敷には珍しい和室に飾られたお雛様。弥生3日はひなの節句。女の子の祭り。この家に生まれた双子のために用意されたのはもちろん七段飾り、が2つ。「二人で一つのお雛様じゃないの!?」本来、雛人形は子供の災厄や災難の身代わりとなるもの。なので、一人に一つが必要だそ...

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「ふわ、すごーい!」

薔薇屋敷とも呼ばれる美作邸。早春は薔薇の季節ではなく、代わりにビオラやミモザなどが咲き乱れているが、つくしが見たものは、この屋敷には珍しい和室に飾られたお雛様。

弥生3日はひなの節句。女の子の祭り。
この家に生まれた双子のために用意されたのはもちろん七段飾り、が2つ。

「二人で一つのお雛様じゃないの!?」

本来、雛人形は子供の災厄や災難の身代わりとなるもの。なので、一人に一つが必要だそうだ。もちろん、姉妹で一つ(優紀の家がそうだった)ってところも多いけど。だって、二つも飾るところが無いよ。

「双子だから2つ、必要でしょう?」と微笑む美作母の夢子さん。
「左のが絵夢ので」「右のが芽夢の」「「お雛様なの!」」
声を揃えてにっこり笑う双子は、お揃いの着物に髪の毛をあげて結い、それこそお人形のような可愛らしさ。肩上げをした着物の上に赤い被布をまとい、髪飾りの鈴がシャラシャラと身動きするたびに音を立て、見ている方も微笑みが浮かんでくる。

壺活けにされた桃の枝が華やかさを添え、緋毛氈が敷かれた上には、雛祭りのお膳。
ちらし寿司にハマグリのお吸い物。そして、いつものケーキではなく、様々な形の和菓子に白酒。つくしは双子の招待を受けて、やってきたのだった。

「どっちが自分のかわかるの?」
「「もちろんですわ!」」

「絵夢のお雛様は、優しいお顔なの」
「芽夢のお雛様は、恥ずかしがり屋さんなの」
顔を見合わせて頷く双子たち。

いずれも名のある職人が作ったと思われるお雛様。
確かに良く見ると顔が少し違う。
同じようで同じではない。
でも、美しいのは同じ。

雛祭りの宴に呼ばれたつくし。いや、雛祭りパーティへのご招待だったが。
いつもの普段着で現れたつくしは、あっという間に衣裳部屋へ拉致され、この場にふさわしいピンク色の着物を着せられている。さすがにキラキラした髪飾りはではないが、黒髪はアップにまとめられて、ピンク色の珊瑚のかんざしがつけられている。

「良く似合うわ~~つくしちゃん、可愛い❤」
衣桁にかけられていた華やかな牡丹柄の振り袖や、金糸・銀糸で縫い取られた総柄の着物などは恐れ多くて着ていられない(というより、物が食べにくい!)ので固辞し、サーモンピンクの花模様の小紋を着せてもらった。ちょっとだけ大人っぽいけど、可愛い着物。

いやいや、いつものひらひらふわふわじゃないけれど、着物を着た夢子ママもやっぱり桃色のお着物でとても可愛らしい。なんで、あんな大きな息子がいるのに、こんなに若いんだろう。うう、お姉さんにしか見えないよ。

「うふ、そう?うれしい」とくるくると回って見せる。

「おい、いい加減にしろよ。お膳にほこりが入るぞ」と苦り切った顔をしている美作さん。
その後ろには、唖然とした表情の3人。

「「お兄ちゃま!」」と駆け寄ってきた双子に手をとられ、緋毛氈の上へ連れてこられた美作さんは、双子の可愛らしさに、目を細めている。だが…。

「あら、あきらくん、なんでお着物着てくれなかったの?」
「あのなあ、普通の着物ならともかく、なんでお内裏様の衣装なんだよ!」

どうやら夢子さんは、美作さんに衣装を着せ、双子と一緒にリアルお雛様にしてみたかったらしい。

「なんで、コスプレしなきゃならないんだよ…」ブツブツ言っているが、残り3人は爆笑している。つくしもこらえているが、肩が笑いで揺れている。

「あきら、あのひな壇の上に登らなきゃ」と類。
「いやいや、そりゃ無理だろ」と総二郎。

「そうなの。お人形と一緒だとそりゃ無理でしょ?だから、あっちに屏風とぼんぼりおいて、写真撮ろうと思ってたのに…」

みれば確かに隣の間には立派な金屏風が置いてある。でもあれは、高砂の席とかにおくものでは?

「あきら、結婚するのか?」と司。
「誰が!俺はまだ大学生だ!」
「だって、あれって結婚式の時の屏風じゃねえのか?」
「へえ、司、よく知ってるね」と類。
「この前、じいさまの結婚式の写真を見たからな」

結婚式というか祝言のとき新郎・新婦が座る場所の事を高砂の席という。

「牧野、一緒に座ろ?」と天使の微笑でにっこり誘うのは類。
「ほえ?」思わず、奇声を発したつくしの手を取り、連れていこうとする。
が、つくしがこけた。

「あ、足がしびれてて…」
てへ、と笑いながら、ひきつった顔をしているつくしを見て、総二郎がにやりと笑いながら、足をつつきに行こうとする。
「ギャー、やめて、やめてってば!」と逃げようとする後ろから、ひょいと腰をつかんで持ち上げて司が荷物のように運んでいく。

「ちょ、何するのよ!」
「バタつくと、丸見えになるぞ」
げっ、と言いながら、ぴたっと動きをとめたつくしを、高砂の席において、隣にドカッと座った。
「これで結婚式だな」とニヤリとする司。

すると、つくしの反対側の隣に類が座る。
「こっちでもいいんじゃない?」

あきらと総二郎が司と類をどかそうと襲い掛かる。
ぎゃあぎゃあ争う中から、四つん這いでつくしが逃げ出し、
「もう、信じられない!」と怒っている。

ニコニコしながら、見ている夢子さんの手には…スマホ。
この日の有様は、お雛様と共にしっかりと記録に残されたのだった。

***

「何笑ってるんだ?」
「うん、これ、雛祭りの写真」
「あー、あの時のか」

大学時代の二人、そして友達。
懐かしいひととき。

二人が座るソファがある居間の隣には、子ども部屋。準備万端で主が生まれてくるのを待っている。つくしのお腹にいる子どもの性別は聞いていない。でも、女の子のような気がしている。

「早く生まれてこいよ」
「待ってるからね」

今年はお雛様はいないけれど。来年はきっと飾ることができる。
その時は、みんなを呼ぼう。
つくしは微笑みながら、隣の肩にもたれ、うっとりと目を閉じた。

FIN




さて、つくしと一緒に本当の高砂の席に座ったのは誰でしょう。
頭の中で脳内変換してください。

拍手コメント御礼 * by ロキ/イズン
*様
司推しでいらっしゃるんですね。
どうぞどうぞ、道明寺邸での一コマとしてくださいませ。
更新がほとんど無いのに、即座のコメントうれしかったです。
ありがとうございました!

拍手コメント御礼 * by ロキ/イズン
H*様
お久しぶりです!
司ですね、はい、そう思ってくださって結構です。
産まれる子を待つ幸せな一コマ。
お気に召したなら幸いです。
拍手コメントありがとうございました!

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2021-01-01 (Fri)

2021新年のご挨拶

2021新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。今年こそ、今年こそ、皆様が健康で穏やかな毎日が過ごせますように。良い年になりますように心から祈ります。なんて一年だったんでしょうか。落ち着いたら会おうね、といった友達とは会えずじまい。どんどん状況はひどくなっています。でも、きっと、いい日が来るはず。明けない夜はないと信じて。2021元旦...

… 続きを読む

新年あけましておめでとうございます。
今年こそ、今年こそ、皆様が健康で穏やかな毎日が過ごせますように。
良い年になりますように心から祈ります。



nengastamp_eto07.png

なんて一年だったんでしょうか。
落ち着いたら会おうね、といった友達とは会えずじまい。
どんどん状況はひどくなっています。

でも、きっと、いい日が来るはず。
明けない夜はないと信じて。

2021元旦
2020-12-31 (Thu)

桜子誘拐事件最終話(はなふさ外伝)

桜子誘拐事件最終話(はなふさ外伝)

「隼様~~~!」「隼様~~!どちらにおいでです~?」歩くことができるようになった子供は、ちょっと目を離すと、姿が見えなくなってしまう。今日も、侍女たちや乳母は、広い館の中を総出で探していた。「ほんとにもう、どこに行かれたのやら」「厩は探した?この前は藁の中にもぐりこんで寝てらっしゃったけど」「もう探したけど、いなかったわ。あ、的場は?」「的場には今、司様が三人衆の方々といらっしゃるけど」「きゃ♡じ...

… 続きを読む

「隼様~~~!」
「隼様~~!どちらにおいでです~?」

歩くことができるようになった子供は、ちょっと目を離すと、姿が見えなくなってしまう。今日も、侍女たちや乳母は、広い館の中を総出で探していた。

「ほんとにもう、どこに行かれたのやら」
「厩は探した?この前は藁の中にもぐりこんで寝てらっしゃったけど」
「もう探したけど、いなかったわ。あ、的場は?」
「的場には今、司様が三人衆の方々といらっしゃるけど」
「きゃ♡じゃあ見に行かなくちゃ」
「あなた、何をしに行くつもり?私たちは隼様を…」
「だって、的場にいらっしゃるかもしれないでしょ?」
「そりゃそうだけど」

片肌脱ぎになって矢を射る練習をしている司。その横には…。
類の胡坐をかいた上にちょこんと座って目を輝かせてみている隼。
同じように矢を射ている総二郎やあきらがいるのに、その眼は司に釘付けである。

「隼、父様が好き?」
「うん、ととしゃまがいちばんかっこいい!」

背の高い父様に抱っこされると、遠くまで見えるようになる。隼、って呼ぶ声も、笑い声も、大きな手で頭を撫でてくれるのも大好きだ。

「おう、隼、お前もやってみるか?」と司。
「おい、そりゃ無理だろ」とあきら。
「弓のほうが隼よりでかいんじゃね?」と総二郎。

「やるー、やるー」と大騒ぎしている隼をみて、総二郎たちはげらげらと笑っている。
そこへ姿を現したのは、つくしと進。そして進の手には…。

「おう、できたか」と司に渡されたのは、小さな弓。糸が張ってあって、恰好だけはついているおもちゃである。
「ほれ、隼、弓だぞ」
興奮のあまり、飛び跳ねている隼を見ながら、皆が笑っている。

「かかしゃま、みて、みて、はやとのゆみ!」
「すごいわねえ、隼、きれいな弓ね」
「ちがうよ、かっこいいんだよ!」

つくしに見せに来たと思うと、また類の膝の上に戻って、嬉しそうに弓を触っている。

二人目の子供は姫で、「はな」と名付けられ、館中のアイドルになっている。そのあまりのかわいらしさに、司はでれでれで、それどころか、当主の柾に楓まで加わって、取り合いをしかねないありさまである。
いつもにこにこと機嫌がよく、ぐずることもない。つくし譲りのその大きな目でじっと見つめられると、思わず誰もが笑顔になってしまう。館の老若男女は骨抜きにされている。

隼は大好きなかかしゃまも、かっこいいととしゃまも、はなにとられてしまって、少し元気がなくなっていた。でも、隼には三人衆がいた。どこにいてもすぐに気が付いて隼と呼んでくれる。それだけで、ちょっと元気になれる気がするのだ。

「はなは?」と司。
「今は、奥方様のところです。」
「またか?」
「はい」と苦笑しているつくし。

はなのために作られた、美しい手鞠や人形も、出番はもう少しあとのはずであるが、次から次へと準備され、はなはえらく物持ちである。そのうえ、東の国の椿から、西条からは桜子が、栄からも滋によって美々しい着物やら髪飾りなどが届けられている。

「まだ髪の毛もあまり生えていませんのに」
「…」

「隼、来い。遠乗りにいくぞ」
隼は思わず、類の膝の上で飛び上がり、頭を類の顎にぶつけてしまった。涙目になりながらも手を伸ばしてくるのをすくいあげて、悠々と歩く司。

「ととしゃま、ゆみ!」
置き忘れられた弓は、つくしがちゃんと持ってくれている。手を振って、嬉しそうにはしゃぎながら隼は連れられて行った。あきらが笑いながら、隼が落っこちないようにとついていく。

「類様、ありがとうございます。隼の世話をしていただいて」
「うん、ちょっと元気がなかったけど、もう大丈夫そうだね。」ぶつけた顎をさすりながら苦笑する類。

「そういえば、進、お前、縁談はどうなったんだ?」と総二郎が聞くのに、
「え、あ、あの、それが…」と真っ赤になった進は、目が泳いでいる。

「ありがたいことに、まとまりそうです」とつくし。
あの頼りなかった弟は、四人衆にははるかに見劣りする容姿だが、有能で勤勉な有望株。そのうえ、次の領主の義弟。降るように持ち込まれる縁談をどうすればいいのか、牧野家では途方に暮れていた。

進が選んだのは、譜代の重臣の家柄ながら、つつましやかな、でも芯が強そうな娘。館で見初めて気になっていたところに持ち込まれた話で、とんとん拍子にまとまりそうである。

進がはにかんだ笑顔に見とれているのに気付いたあきらが持ち掛けたが、娘は進の誠実そのものの仕事ぶりに好感を持っていたようである。家格にだいぶ差があるが、娘の親も出世間違いない男は良い婿がね、と大乗り気。秋に祝言をすることになった。

「類様、桜子様からお便りがあったのですが、はなを嫁に欲しいとおっしゃってるんです」
「ははあ、早速か。向こうの一太郎にちょうどいいと思ったか…」
「それだけでなく、滋様からも同じことを言ってこられて、もうどうしようかと…」

滋は亜門との間に息子が生まれ、大河原の家は万々歳で大騒ぎになった。はなと同い年で、こちらも年回りはいい具合である。

「つくし、がんばってもう一人産んだら?」
からかうように言う類に、つくしは真っ赤である。

「え、もしかして、また?」
「…」

「さすが司」
「だな」

明るい笑い声が響く館。
弥栄(いやさか)、はなふさのくに。

めでたし、めでたし。